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希少種宝庫にメガソーラー 神戸・北区に開発計画、甲子園29個分

 神戸市北区山田町の広大な山林に、東京の民間事業者が、市内最大となる大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を計画している。全体の事業区域は111ヘクタールで甲子園球場29個分、市の面積の約500分の1に相当。区域内には、市レッドデータAランクのスミスネズミ、同Bランクのカスミサンショウウオなど希少な動植物が計142種も生息する。区域の一部で森林伐採や地形改変を伴うことから、生態系や森林の保水力などへの影響が懸念されている。【写真】希少な動植物が生息するメガソーラーの建設予定地の地図■防災、生態系への影響 市が懸念

 市によると、事業区域は北区山田町の坂本、東下、中地域にまたがり、かつてゴルフ場の開発計画があったという。住宅地や、市条例の「禁止区域」に当たる災害危険区域などは含まれていない。

 事業を計画するのは「バイワ・アールイー・ジャパン」(東京)。事業区域のうち約40ヘクタールの土地を造成し、約18万枚の太陽光パネルを設置。発電出力40メガワットを予定する。

 環境アセスメントに基づく同社の調査によると、事業区域では国、県、市のレッドデータに記載されている動植物の希少種142種が確認された。市内に生息する希少種の6分の1に当たり、市レッドデータBランクのオオタカ、同Cランクのタコノアシやギンランなども見られるという。

 同社は、事業区域内で未開発のまま残すエリアに希少種を移す方針。しかし、例えばカスミサンショウウオは元の生息地への帰巣本能が働くなどし、移設地に定着しない恐れもある。

 市環境影響評価審査会の会長を務める武田義明・神戸大名誉教授(植物生態学)は「森林伐採が地域の生態系に影響するのは間違いなく、もし希少種の移植が失敗したら取り返しがつかない」と危惧する。

 市はこのほど、同審査会の答申を受け同社に市長意見書を提出。生物多様性の喪失や森林の保水力低下のほか、集中豪雨による発電施設の損壊・崩落など防災上の懸念も指摘した。ただ市長意見書に法的拘束力はない。

 同社は「環境影響の低減に配慮した計画となるよう、今後も神戸市と協議手続きを進め、地元住民と協調しながら計画を進めたい」としている。

 同社は今後、市長意見書を踏まえた環境影響評価書を作成し、市に提出する予定。

【環境アセスメント】大規模開発を行う事業者が、環境への影響を調査・予測・評価した上で、その結果を公表し、住民や行政の意見も踏まえて環境保全を図る手続き。神戸市の条例で、太陽光発電所は自然地の改変面積が20ヘクタール以上の場合に適用される。実施計画書や環境影響評価書、着工後の事後調査報告書などの作成が求められる。